84人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは……栗原先輩の告白の邪魔をしたくなかったから。何度も言うけど、ただ純粋に沢渡さんに告白するだけだって思っていたから」
「シュン……!お前……」
児玉先輩は何か言いたそうにしていたものの、結局押し黙ってしまう。
反論の言葉が思い付かないようだった。
美作先輩のいうこと。
強引だけど一応の筋は通っている。
あとはそれを信じるか信じないか。
児玉先輩は美作先輩の幼なじみだから、信じられないと思いながらも、信じたい気持ちがあるのかもしれない。
じゃあ、私は………?
「……沢渡さん」
「え……」
浅間先輩が私に声をかける。
心から心配そうに見つめてきていた。
「沢渡さんはどう思う?」
「え……」
「美作くんのいうこと、信じられる?わたしは、筋は通ってはいるけど信じにくいと思う」
「……あ、あの……私もです……。その、……信じるのは……不安、です」
そう言うと、美作先輩はピクリと眉を動かした。
「だったら……一緒に舞台はやれないね。仲間を危険にさらす可能性のある人と劇は作れない。美作くん、今回の役は降りてもらう。それで、沢渡さんには関わらないこと」
「…………そっか。わかりました」
美作先輩は深い息を吐いた。
そしてカバンから何かを取り出す。
それは台本だった。
今回の劇。『星のしあわせ』の。
美作先輩の台本はボロボロになっていた。
ふせんや書き込み、何度も何度も……何十回と読み返したあとだった。
「……美作、先輩」
最初のコメントを投稿しよう!