どうなる、summer vacation

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「今何時だ、桜」 まばたきして目薬を馴染ませながら、お兄ちゃんが聞いてくる。 「え、えーと……6時過ぎだよ」  「演劇部終わるの、いつもこれくらいか?」 「うん、そうだね。もうすぐ夏休みだから、そうなったらまた変わるけど」 「そうか……」 お兄ちゃんの目から目薬が少し流れる。 目薬だとわかっているのに、一瞬だけ泣いているように見えた。 ……胸がチクリと痛い。 何の痛みだろう。 「……じゃあ、明日からも一緒に帰ろう」 「え!?本当に」 「嫌か?」 「い、嫌じゃない!嬉しい!」 「じゃあ、決まりだな」 そこまで言うと、お兄ちゃんは眉間にシワを寄せ、目をおさえる。 「あー、ダメだ。やっぱ目ぇゴロゴロする。コンタクト外してくるから待っててくれるか」 「あ、うん。わかった」 生徒会室を出ていくお兄ちゃんを見送る。 コンタクトレンズってどうやって外すんだろう。 わざわざ外に出るってことは、何か特別なものがいるのかな。 「……うーん」 待っている間、ちょっぴり退屈だ。 ふと、机に広げっぱなしになっている英語のワークに目を落とす。 三年生ってこんなことするのか……。 現在完了……ってどういう意味? 日本語で聞いてもよくわからない言葉だ。 他にはどんな内容があるのかとワークを手に取った。 するとハラリと何かが床に舞い落ちる。 それは一枚のプリント。 ワークに挟んでいたのかな。 慌ててそれを拾い上げる。 大きいプリントにたくさんの数字が書かれていた。 上部には「マーク模試 成績表」の文字。 これ…… 多分、模試の結果だ。
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