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学校から家まで、歩いて10分ちょっと。
お兄ちゃんとこうして一緒に帰ったことがないわけじゃない。
それでも今日は特別に感じる。
私たち付き合ってる……んだよね。
「もうすぐ夏休みだな」
お兄ちゃんがふと横顔でつぶやく。
その顔は西日でオレンジに縁取られていた。
「そ、そうだね。桜、中学の夏休みは初めて」
「別に小学校と変わんねえと思うけど……お前は部活あるんだよな」
「うん!夏休みに入ると、大会が近いからほとんど一日中やるんだって」
お兄ちゃんはため息をついた。
「……マジか。すげえな。下手すりゃ運動部より長いんじゃねえ?」
「え、そうなのかな」
「まあ、大会近いならそんなもんか。……宿題ちゃんとやれよ。小学校のときみたいになるなよ」
「……う。た、たぶん大丈夫」
小学生のとき。ついつい夏休みの宿題をためてしまうことが多かった。
ワークはまだいい。頑張れば終わる。
問題は日記や植物の観察記録。毎日しないといけないもの。
どうしようもなくなって、お兄ちゃんに泣きついたこともあったっけ。
我ながら情けない……。
(って、なんだこの話題!)
宿題とか、小学校とか。
これじゃ今までと何も変わらないじゃないか。
私たち付き合ってるんだよね!?(二回目)
だったら、このタイミングでする話は一つじゃないの。
「お、お兄ちゃん!桜、夏休みの部活、日曜日は休みのはずなんだ……」
「ふーん」
「だ、だから……っ」
「じゃあ、どっか行くか」
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