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「名前……。………の、望……、ちゃん?あ、いや、じゃなくて望くん……とか?」
「別に何でもいい。つか、面倒だし呼び捨てすれば?」
「え!の、望ってこと!?い、いやー……それは流石に呼びにくいというか……」
もじもじする私に、お兄ちゃんは『まあ、好きにすればいいけど』といつものように素っ気ない態度だ。
もう。
私がどれだけドキドキしていると思っているんだろう。
でもそうだよね。
私たち恋人同士だもん。
幼なじみならまだしも、彼氏をお兄ちゃんとは呼ばないよね。
よし、決めた。
もうお兄ちゃん卒業だ。名前で呼ぶぞ。
望ちゃん、望くん、望さん……
……やっぱり、望ちゃんが一番呼びやすいかな。
「あ、あの……のぞみちゃ……」
「あ、桜ー!望くんー!」
「え?」
後ろから呼ばれて、私もお兄ちゃんも振り返る。
お父さんが手を振ってこっちに来ていた。
「お父さん!」
「桜!望くんも。今帰りか?」
「うん!お父さん、今日早いね。お仕事もう終わったの?」
「ああ。今日はちょっとチームの都合でな」
お父さんはそう言って優しく笑う。
昔、サッカー選手をしていたお父さん。
選手を引退したあとは、チームのコーチをしている。
サッカーをしているときのお父さんは、私から見てもとてもカッコいい。
照れくさくて、あまり大っぴらには言えないけど……自慢のお父さんだ。
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