どうなる、summer vacation

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「え、ええ?え、付き合うって……二人が?」 「はい」 お兄ちゃんはハッキリうなずいた。 「……つまり、か、彼氏と彼女ってこと?」 「はい」 「そ、そりゃそうか。ははは……てか俺なに言ってるんだろう」 お父さんは頭をかきながら照れくさそうに笑う。 いつもの爽やかな笑顔……に見えて、少し口元がひきつっていた。 「付き合うって言っても、正直今までとそんな変わらないと思いますけど……」 お兄ちゃんは小さく咳払いをして、お父さんと向き直った。 「ただ、こうして話したのは、おじさん達に心配かけたくなくて。オレ、桜のこと、ちゃんと大切にします。 だから、その、……よろしくお願いします」 「望ちゃん……」 そんな……そんな風に思ってくれていたんだ。 あのとき、私に気を使って付き合うって言ってくれたんじゃないかって、ほんの少し心配だった。 でもお兄ちゃんは、ちゃんと私を考えてくれていた。 なんだか泣いちゃいそうだ。 「望くん……」 お父さんは私たちの顔を交互に見つめる。 「うん、わかった。……ありがとう話してくれて。望くんなら安心だよ。桜のこと、よろしくな!」 力強くそう言うと、にっこり笑った。 温かい、安心する。私の大好きな笑顔で。 「……はい。ありがとうございます」 お兄ちゃんもほっとしたように、少し顔をほころばせた。 「ところで望くん。高橋……君のお母さんは知ってるのか?」 お父さんが聞くと、お兄ちゃんは首を横に振る。 「……いえ。まだ言ってません」 「じゃあ、伝えておいてほしいな。その方が俺たちも……君のお母さんも安心すると思うから」 「はい。わかりました」 お父さんの言葉にうなずくと、お兄ちゃんは『それじゃあ』と家に帰っていった。 最後に 「また明日な。桜」 と言って私の頭をぽんと優しく叩いた。 その手の温かさが、心にじんとしみていくような気がした。
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