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「海ちゃん可愛いー。このワンピースもよく似合ってるー」
「……は、恥ずかしいな。なんか緊張でガチガチになってるし。……隣の空はすごい笑ってるし。アイツ遠足写真かなんかと勘違いしてるんじゃないの……」
「本当だ。あはは。空ちゃんめっちゃ笑顔だー」
海ちゃんの双子の弟・空ちゃん。私の叔父さんにあたる人。
空ちゃんはネクタイを締め、チャコールグレーのスーツを着ていた。
緊張一杯の海ちゃんと対照的に、空ちゃんは明るい笑顔。
その対比がとても微笑ましい。
ぱらぱらめくると、今度はお母さんたちの友達との写真。
このときにはお色直しをしたのか、お母さんのドレスの色が変わっていた。
華やかなレモンイエローのドレス。
お母さんは弾けるような笑顔で、友達に囲まれている。
「これツバメちゃんのお母さんだよね!……こっちは?」
「その人はお母さんの中学のときからの友達だよ。マヤちゃんっていうの」
「中学……」
お父さんとお母さんが出会ったのは、二人が高校生のとき。
この写真に写る海ちゃんは中学生。
当たり前だけど。
お父さんにもお母さんにも。それに海ちゃんにも。
大人には全員子供だった頃があって。中学生だったときもあって。高校生になったりして。
みんなだんだん大人になっていったんだ。
中学生、高校生のお父さんお母さんなんて想像できないけど。
今の私みたいにテストしたり部活したりしていたのかな。
……好きな人はいたのかな。
私が望ちゃんのこと考えるときみたいな。
そんな気持ちになったのかな。
「……桜ちゃん?どうかした」
「あ!ううん。何でもない。えへへ、みんな綺麗だからみとれちゃったよ」
「え!えー、桜ちゃんったら……」
お母さんがびっくりしたみたいに目を開き、顔を赤くした。
それから私の隣に来て、アルバムを覗き込む。
「……あ、そうだ、桜ちゃん。望くんも写ってるの知ってた?ほら、この写真」
「え!本当!?」
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