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お母さんが指差した写真。
眼鏡をかけた笑顔の男性……望ちゃんのお父さんだ。
そして、おじさんに抱っこされている小さな子供。
子供用のスーツみたいなものを着ているから男の子だとわかるけど、顔が全然見えない。
周りから隠れるようにおじさんの首にしがみつき、顔を肩にうずめている。
「……望ちゃん、全然誰かわからないね」
これは写ってると言えるのだろうか。
おじさんが抱っこしているから多分望ちゃんだろう……くらいの感じだ。
「んー、……これくらいの歳だと人見知りがあるからね。このとき望くん一歳くらい…だった、はずだから」
「人見知り……。なんだか意外。望ちゃんって昔からふてぶてしい……じゃなくて、堂々としてたから」
「ふふ。……桜ちゃん、望くんと遊んだのって何歳くらいのときから覚えてるの?」
「え、うーーーん………」
この家に引っ越してきたのは確か三歳のとき。
それから頻繁に望ちゃんに会うようになった。
でも正直まだ小さかったこともあって、その時の記憶は曖昧だ。
望ちゃんはあのときから言葉も態度もキツイ……というか遠慮がない感じで。
「トロい」とか「甘えんな」とかしょっちゅう言われたし、木登りや虫取りみたいな苦手な遊びにも何度も付き合わされた。
自分でいうのもなんだけど、周りから優しくされてばかりだった私は、彼が恐かった。
……でも
そう。あの日だ。
たぶん、これが覚えている中で一番昔の記憶。
望ちゃんと遊んだとき。
公園だったかキャンプだったか忘れたけど、一緒に木登りをすることになった。
といっても、もちろんやりたいと言ってるのは望ちゃんだけで、私は無理やり付き合わされただけ。
『こわい』と何度も言う私を望ちゃんが半ば強引に木の上に引っ張りあげた。
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