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「ほら、くつ」
「あ、ありがとうー」
望ちゃんから受けとる、私の靴。
紺色で緑の四つ葉の飾りがついている。そしてその四つ葉には小さなてんとう虫。
…ん?てんとう虫?
この靴そんな飾りあったっけ?
と、思っていたらてんとう虫がいきなり羽を広げて飛び立った。
「きゃああ!」
「さくらんぼ!」
驚いてバランスを崩しそうになる私を間一髪で望ちゃんが支えてくれる。
「び、びっくりしたぁ……な、なに……なに」
「……てんとう虫。あ、さくらんぼの髪にとまった」
「え?」
望ちゃんが私の髪に触れる。
すると小さなてんとう虫が羽ばたき、音もなく飛んでいった。
……と、思ったのにまた戻ってくる。
今度は私の鼻先に止まった。
「ひゃああっ」
「さくらんぼ、あばれるな!あぶないから」
「でもぉっ」
「ほら、おいはらってやるから」
それから……飛んでは止まって、飛んでは止まって……
ようやくてんとう虫は遠くの空へと飛んでいった。
「……うう……びっくりしたびっくりしたあ……」
「すごいしつこかったな」
「もしかして……さくらを葉っぱとまちがえたのかなあ」
「え……それはないんじゃ………ふっ」
望ちゃんが吹き出す。
そして、あははと声をあげて笑った。
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