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(………なつかしい)
確かあのあとは、下りるときに私が怖いと泣いてしまって、結局お父さんたちが助けにきてくれたんだ。
そして、望ちゃんは危ないことするなとおばさんに怒られていた気がする。
……ごめん、望ちゃん。
なんて、アルバムを見ながらぼんやり思い出していると、お母さんが『なにか思い出したの?』と顔を覗き込んでくる。
素直に答えるのがちょっぴり恥ずかしくて、首を振って誤魔化した。
そうしているうち、アルバムも残りわずか。
いつの間にかお母さんも、ちょっと恥ずかしそうだけど楽しそうに写真を眺めていた。
「……あ、ほら。これ海ちゃんの写真だよ」
お母さんが指差す先。
笑顔の海ちゃんがそこに写っていた。
家族写真のときの緊張した顔とは違い、にっこり嬉しそうに微笑んでいる。
そんな海ちゃんの隣には黒い髪の男の人。
ゆったりした笑顔を浮かべている。
「この人……えーと……綾瀬さんだよね」
そう聞くと、お母さんはうなずいた。
綾瀬さん。綾瀬秀介さん。
お父さんの友達で、昔から演劇をしている。
仕事であちこちを転々としているらしく、あまり直接会ったことはない。
でも、お父さんの口からは度々名前が出てくるし、いつかお話したときの優しい目をなんとなくだけど覚えている。
そんな綾瀬さんと、海ちゃんのツーショットだ。
「そういえば、海ちゃんと綾瀬さんって仲いいんだよね?」
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