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「え?」
「ほら、確か前に海ちゃん、小さい頃よく綾瀬さんと遊んだって言ってたし」
「そう……そうだね、うん。そう……秀ちゃんにはよく遊んでもらったな……」
そうつぶやいて、海ちゃんは微笑んだ。
「……秀ちゃんは、優しくて物知りで、あの頃の私の憧れだった。今も、尊敬してる……」
「海ちゃん……」
海ちゃんはどこか夢見るような瞳で話す。
その目は写真の海ちゃん……少女だったころの彼女によく似ていた。
「……ふふっ。なつかしい。ね、晴香お姉ちゃん」
「そうだね。海ちゃん、大人になったね」
海ちゃんはお母さんと顔を見合わせて笑った。
優しくて、大人っぽい横顔。
もうすっかりいつもの海ちゃん。
だけど、私はさっきの海ちゃんが心に残っていた。
あの少女のような瞳。
それはとてもよく知っているものに思えたから。
(……海ちゃんの瞳。綾瀬さんの話をしたからかな)
ふと、そう思った。
そういえば、綾瀬さん。
全然会っていないなあ。
またいつか会えるのかな。
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