あなたと、sweet time

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「望ちゃん、どこから行く?サバンナ?それとも水辺の生き物?」 二人並んで案内板を見る。 そうしている間にも太陽が照りつけ肌をじりじり焦がしていく。 雲一つない晴天。そのぶん暑さも相当なものだ。 「……まあ、時間もあるし、近いとこから順番でいいんじゃねえ」 「うん、わかった!じゃあ、フラミンゴ見に行こう!」 「ああ。 ……なあ、桜。ひとついいか?」 望ちゃんはそう言うと、鞄からカメラを取り出した。 「写真、撮ってもいいか」 「え、写真?桜の!? ……うん。いいよ、望ちゃんなら。 ……ま、待ってね、髪の毛跳ねてないかな……」 「………あ、いや。そうじゃなくて」 望ちゃんが困ったような顔をする。 「写真部の展示会がもうすぐだから、それに出す写真が動物園で撮れたら……と思って」 「え……」 「「………」」 私たちは顔を見合わせ、一瞬黙りこむ。 展示会……動物園…… ここで動物の写真をとりたいってことか! ……は、恥ずかしい。 顔がカアアッと熱くなっていった。 「ぷっ……」 望ちゃんが我慢できないというように吹き出す。 「あー!笑った!」 「いや、だってなあ……」 「もう!もう! の、望ちゃんがややこしい聞き方するからだもん!」 「そんなややこしかったか?」 「もうー!!」 ぷいっと背を向け、そのままフラミンゴの池まで歩き出す。 望ちゃんがクスクスからかうように笑いながら隣を歩く。 「……写真撮ってほしかったらいつでも言えよ」 横顔でそんな意地悪を言ってくる。 「し、知らないもんっ」 そんな私たちを真夏の太陽が見下ろしていた。
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