あなたと、sweet time

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望ちゃんが目を細める。 そしてカメラをこっちに向けると、カシャッとシャッター音を立てた。 「わっ!の、望ちゃん今撮った!?桜のこと!」 「さあな」 「えー、撮ったよ絶対。桜、変な顔してなかった?」 「知らねえ」 「もうーー!絶対絶対変な顔になってたー」 クスッと笑い声をもらす望ちゃん。 「いつも通りだよ。バーカ」 そう言って目を細めて笑う。 望ちゃんのよくする笑い方。 ちょっと意地悪で、からかうような。 小さいころからいつも見ていた笑い顔。 「……ほら。じゃあ次行くぞ。こっちの……ライオンのエリアだな」 「あ、う、うん」 「てか、暑いな。……おい、桜」 望ちゃんが振り向き、私に近づく。 私の帽子のつばをもち、ちょっとだけキュッと上にあげる。 そうして顔を覗きこんできた。 「の、望ちゃ……っ」 近い。 望ちゃん顔がすぐ近くにある。 息がかかりそうな距離。 望ちゃんの黒い睫毛がくっきり見えるほどだ。 「桜、お前顔真っ赤」 「そ、それは……」 「あと汗もすごい」 「え」 望ちゃんが私から顔を離す。 それから日陰にある園内カフェを指差した。 「休憩しようぜ。今日かなり暑いからな。熱中症になったらヤバイだろ」 「休憩……」 「昼も近いし、なんか食うか」 「……あ、はいはいはい!望ちゃん!!」 私は手をあげ、同時に持っていたバッグを大きく掲げた。 「桜、お昼ごはん作ってきました!」 「え………」 望ちゃんの動きが止まった。
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