84人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
「望ちゃん、なんでそんな顔するのー」
「いや、だって。お前料理とか出来ねえじゃん」
「で、で、できなくないもん!ときどきお母さんとお菓子作るし。料理のお手伝いもたまにだけどするもん!」
「お菓子…………」
望ちゃんが苦虫を噛み潰したような顔になった。
お菓子作りは、私もお母さんも結構好きだったりする。
そして昔からクッキーやケーキを作ると、よく望ちゃんにお裾分けしていた。
でもいつも反応が芳しくなかったりする。
「あー!桜の作ったお菓子は美味しくないって思ってるんでしょ!?」
「いや、味は美味い。けど……その、……固い。いつも」
「え、手作りってあんな風になるものじゃないの?」
「…………え」
「…………」
「…………」
なぜか沈黙。
「……まあ、いい。とりあえず弁当作ってきてくれたってことだな?」
「う、うん。お弁当っていうか、おにぎりだけど」
本当はちゃんとおかずも作りたかったんだけど。
デートが決まったのが昨日の夜だったので、材料も下準備も全然足りなかったのだ。
「じゃあ、あそこで食おうぜ。今なら席も空いてるし」
望ちゃんが私の手からおにぎりの入ったカバンをひょいと取る。
カフェの方へと歩きだした。
私もそれについていく。
「ありがとな、桜」
「え!あ、ううんっ!美味しくなかったらごめんね」
「大丈夫。最初から期待してねえから」
「ちょっ、ちょっとくらいはしてよー!失礼だよ!」
最初のコメントを投稿しよう!