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「何を自慢げに……。しかし、相変わらず仲いいんだな。マジの姉妹みてえ」
「うん!桜、海ちゃん大好きだし、本当のお姉ちゃんみたいに思ってるよー。
あ、そうだ!あのね、明日、海ちゃんのウェディングドレス選びにいくの」
「桜が?なんで」
「海ちゃんが誘ってくれたんだー。
うちのお母さんも、ウェディングドレス選ぶとき海ちゃんを誘ったんだって。だから、今度は桜に一緒に来てほしいって」
「なんかわかるようなわかんねえような……。まあ、いいや。海さんたちに迷惑かけんなよ」
そう言うと望ちゃんはウーロン茶を飲み干した。
いつの間にかお弁当箱のおにぎりもほとんどなくっていて、残りはあと1つ。
「望ちゃん、最後一個どうぞ。桜、もうお腹いっぱい」
「じゃあ、もらうな」
望ちゃんは最後のおにぎりをやっぱり二口で食べ終わった。
「ごちそうさま」
「うん。……えへへ、おそまつさま?だっけ」
「ああ」
フッ、と。望ちゃんが笑った。
そのときひんやりした風が吹き抜け、汗ばんだ肌を冷やす。
……気持ちいい。
私たちはしばらくカフェの椅子に座ったまま、動物園を行き交う人たちを眺めた。
やっぱり圧倒的に小さい子を連れた家族が多くて、私たちみたいな学生同士は少ない。
走り回る子供たちを何とはなしに見つめる。
望ちゃんも同じ方に顔を向けていた。
だけど何だか遠い目。
ここにいるのに、全く違う場所を見ているみたい。
そういえば望ちゃんはときどきこんな目をする。
いつからだっけ。
小さいときはそんなことなかった気がする。
どこを……何を見ているんだろう。
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