あなたと、sweet time

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望ちゃんがなぜか小さく笑った。少し寂しそうに。 「…プロにそう言われるなんて光栄だな。オレなんて大したことねえけど……」 「そうかなあ。望ちゃん、運動神経いいし、走るのすごい速いし、サッカーまたすればいいのに。 昔、私たちの家族で一緒によくやっていたよね」 「ガキの頃の話だろ。……それにオレ、サッカーはもちろん嫌いじゃないけど、陸さんみたいにずっとやりたいってほどは思っていなくて……」 望ちゃんはそこまで言うと言葉を詰まらせた。 なにか言いづらいことがあるみたいに。 「……望ちゃん、他にやりたいことあるの?」 「いや……別に」 「写真とか?それとも動物関係?」 「まあ、それも好きだけど。……つか、お前こそどうなんだよ、桜」 「……む」 露骨に話をそらされた。 これは踏み込まれたくないということで、これ以上突っ込むと多分怒られる。 長い付き合いだもん。もう慣れっこだ。  ……でも、長い付き合いでも。 わからないことってたくさんあるね。 「わ、私は、今は演劇部楽しいかな。……ずっとずっとやりたいかって言われるとよくわからないけど、でも今は演劇部を一番頑張りたいと思ってるよ」 「……ふーん。いいんじゃね。……頑張れよ」 望ちゃんは口の端をちょっぴりあげて笑顔を見せた。 でもすぐに真面目な顔になる。立ち止まり、振り返るように私を見た。 「望ちゃん?」 「桜……お前、将来の夢とかある?」
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