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少し先にある臨海エリア。
まだ海は見えないけれど、少し空気が変わった気がする。
動物園は家族連れの定番という雰囲気だったけど、ここにくるとカップルの姿が多い気がする。
私たちと同じくらいの歳のカップルもいて、なんだかドキッとした。
「……桜、あれ」
望ちゃんが指さしたのは、大きな観覧車。
海を背にするように、赤い観覧車が建っている。
「わあ!大観覧車だー!あ、あれ有名なやつだよね」
確かデートで乗るのが流行ってるという……
「……っ!」
自分の考えにはっとした。
望ちゃんの方を見ると、うなずいて小さく笑った。
「桜、好きだろ。こういうやつ」
「え、う、うん……!」
「じゃあ、乗ろうぜ」
「えっ!?い、いいの?」
「……ダメなら言わねえよ。ほら、行くぞ」
「う、うん……!」
観覧車はやっぱり人気があって、何人か並んでいた。
私たちもその列に続き、待っている間大きい観覧車を見上げるようにして眺める。
ゆっくり、ゆっくり回る観覧車。
ゴンドラがかすかに揺れながら空を横切っていく。
「わあー、楽しみだなあ。桜、この観覧車乗るのはじめて!」
「そりゃ良かった。お前、怖がりのくせに高いとこ好きだもんな」
「え、そうかなあ。確かに観覧車は好きだけどー」
「昔、木登りしたときも喜んでたじゃねえか」
「………!」
「まあ、下りるときはビビって泣いていたけどな」
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