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「ね、ね。桜たちのお家見えるかなー」
「どうだろ。学校くらいなら見えるかも。……いや、多分無理だな」
「そっか。……でも、あの辺りにあるんだね。えへへ、変な感じ」
「………」
「………望ちゃん?」
急に黙った望ちゃんに呼び掛けると、真剣な……でも遠くを見ているようにも思える表情で、窓の外を見ていた。
「望ちゃん、なにか見える?」
「……いや、別に。
……近いよな。オレたちの家って」
「え、ご近所さんってこと?……うん、そうだね?」
唐突にも思える言葉。
望ちゃんの話の意図がいまいち見えて来なくて、私は曖昧にうなずいた。
「……もう10年になるよな。お前が引っ越してきたときのこと覚えてる。もじもじして、おじさんおばさんの後ろにずっと隠れて、声かけてもほとんど答えねえし、なんだコイツって思った」
「えー、そうだっかなー。そこのところは桜あんまり覚えてないや。望ちゃんと遊んだ記憶はたくさんあるけどね」
足をぷらぷらさせながらそう答えると、望ちゃんは呆れたような苦笑いを浮かべた。
「なんだそりゃ。……まあ、お前小さかったもんな。そんなしっかり覚えてねえか。
あの頃から……いや、初めて会ったころから、オレにとってお前は小さいガキで、うるさい妹みたいなもので、……ずっとそんな存在だったのに」
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