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「……そ…っか」
望ちゃんが目を閉じて、口角をあげた。
「……なんか……オレの方が馬鹿だったな」
そして正面からまっすぐ、私を見据える。
もう、窓の外は見ていなかった。
「の、望ちゃん……」
「ごめん、変なこと言って」
「え、べ、別に。望ちゃんがよくわからないこと言うの、昔からだし」
「……悪かったな」
怒ったような呆れたような顔で望ちゃんがつぶやく。
だけど本心から怒っていないのは、声ですぐにわかった。
「だって、望ちゃんいつも何か難しいことばっかり言うんだもん。桜にはわかんないよー」
「そりゃお前がガキだからだろ。
……って言いたいとこだけど、……今は本当にそうかもな」
「え?」
「オレ……きっと難しく考えすぎていたんだな。お前とのこと……」
望ちゃんが腕を伸ばした。
私の方へ。
私に、触れるように。
「の、望、ちゃん!?」
「帽子、ズレてる」
そう言うと、私がかぶっている帽子のつばに触れ、まっすぐに戻してくれた。
少しだけ望ちゃんの指先が髪に触れる。
「オレはずっとお前のこと、妹みたいなもんだと思っていたよ。手のかかる、鬱陶しい妹」
「……」
「ずっとそう思っていたかった。……変わるのが……怖かったのかもしれない」
「怖い?」
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