あなたと、sweet time

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「きれい……」 景色の美しさに、素直にそうつぶやく。 望ちゃんは何も言わずにうなずいた。 「観覧車おりたら帰るか。あんま遅くなったらおばさん達心配するだろうし」 「うーん……まだそんな遅くないし大丈夫だと思うけど」 とは言え、帰りにかかる時間を考えるとそろそろ帰るのが妥当かもしれない。 「心配させたくないんだよ。オレたちの付き合いで」 「……どういうこと?」 「オレと付き合うことで桜に悪い影響が出るようなことは駄目だろ」 「心配しすぎだよー。望ちゃんのことお母さんもお父さんも信用してるよ」 「それでもだよ。オレの方が年上なんだし。これからも……長く付き合うだろうし」 「……望ちゃん ……あ、ありがとう」 長く、付き合う。 その言葉の意味に、胸がふわりとあたたかくなる。 私はゆっくり立ち上がり、座る場所を移動する。 向かい合わせから、望ちゃんの隣へと。 ほんの少しだけ観覧車が揺れた気がしたけど、特に問題はない。 ドキドキしながら、望ちゃんの肩へと寄りかかる。 望ちゃんが驚いたのが気配でわかった。 だけど、嫌がるようなそぶりはない。 肩に手を置いて、そっと私を引き寄せる。 「……あ、望、ちゃん……」 「なんだよ」 素っ気ない声。でもその横顔は赤く染まっている。 私はこぼれそうになる笑みをこらえた。 「ううん、なんでもない……。ね、またデートしようね」 「……………ああ」 観覧車がゆっくり下降していく。 私たちはその間特に話をせず、ただ寄り添っていた。
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