ささやかに、heart beat

7/9
前へ
/259ページ
次へ
腕を曲げ、ケガをしているひじをお兄ちゃんに見せる。 ……なんだろう。 すごく、……恥ずかしい。 別にふつうだよ。絆創膏貼ってもらうだけだよ。 それなのに、それだけで、ドキドキする。 「大丈夫、大したことねえよ」 「だ、だよねっ」 「お前、このあと何か競技出んの?」 「えーと。あと綱引きだけ」 「あー、まあ綱引きするなら絆創膏貼ってた方がいいか」 お兄ちゃんが絆創膏の包みを開けて、取り出す。 少しだけかがんで私に目線を合わせた。 お兄ちゃんの顔が近くなる。 サラサラした黒い髪。 その下の切れ長の目が私のケガを見ている。  お兄ちゃんの目は吸い込まれそうなくらい、深い黒。 目尻の睫毛が影を落とす。 お兄ちゃんの手が、器用に絆創膏を広げて貼る。 指先が私にふれてこそばゆい。 長い指も すこしだけ骨張った手も 深く黒い、髪も目も 私とは全然違っていて とても、…綺麗だと思った。 ……ふと。 お兄ちゃんの目元。 貼られた傷テープが目に留まる。 ガラスで切れた傷。 私を守ってくれてついた傷。 ……まだ痛むのかな。 どれくらい治ったのだろう。 私、私が…… ……痛いのを、代わりたい。 無意識に、お兄ちゃんの傷テープに手を伸ばす。 「……ほら、桜。貼った……ぜ」
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加