ささやかに、heart beat

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「お兄ちゃん……」 顔が、赤い。 お兄ちゃん、顔が赤い。 それって… ……もしかして、もしかして お兄ちゃん……照れてる、とか? 私が今ドキドキしているみたいに。 お兄ちゃんもドキドキしてくれているの? 「あ、あの……お兄ちゃん……」 「……なに」 「えっと……」 どうしよう。 なんて聞けばいいのかな。 今までにない雰囲気に戸惑う。 「えと……桜、じゃなくて、私……ね」 「…………」 そのとき 「スウェーデンリレーに出場する生徒は本部前に集まってください」  というアナウンスが流れた。 お兄ちゃんがハッと我に返った顔になる。 「……オレ、これ出るから」 「あ、う、うん」 はあ、とお兄ちゃんの口から長いため息がもれた。 「じゃあな、桜。……もう転けるなよ」 「うん……あ、お兄ちゃんリレー頑張って。応援してるから……」 「あ、そ。……わかった」 お兄ちゃんはそう言うと、集合場所へと駆け足で去っていった。 私は…… 「……まだ顔が熱い」 お兄ちゃんの顔も、たぶんまだ赤い。 初夏の日差しの下。 なにかが変わっていく予感がした。
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