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プロローグ
「お前みたいな『出来損ない』は二度と結婚できないだろう」
離婚した元夫から私が聞いた最後の言葉である。
その日、私の両親と元夫とその母、そして私で話し合いをした。彼はしばらく「離婚はしない」と言い続けていたのだが、こちらが頑なに拒否をしていたので逆ギレした彼が言い放ったのだ。
それを聞いた父が激怒し、彼に殴りかかろうとしたが母が必死に止めた。そのときの修羅場といえばもう壮絶なものだった。ぶち切れた父に怯えた元夫、そして「うちの子は正しい」の一点張りである元義母。
両家の話し合いなどできるわけもなく、今後は弁護士を通して話し合いましょうということになった。
そして私は離婚した。
別居からおよそ半年かかった。
向こうが手を出した証拠(私の顔に痣)があるので、わずかながら相手から慰謝料をいただくことができたのはさすが弁護士の力だなあと思った。
二度と結婚できないだって?
するつもりなんか、絶対ない。
離婚が成立してから半年後、私は地元を出て見知らぬ土地でひとり暮らしをはじめた。
何の取り柄も才能もない私が無職の3年間を経て就職するのは困難だったが、私にひとつの仕事が舞い込んできた。
それならきっと、私は完璧にこなすことができるだろうと思ったから。
それが、私の人生の再スタートだった。
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