5、境界線を越えた夜

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 いつものように夕方に買い物へ出かけていると、道中浴衣を着た若い子たちを見かけた。中学生くらいの女の子が三人、ピンクやブルーなど色違いの浴衣を着て楽しそうにおしゃべりしながら歩いているのだ。  しばらくすると今度は浴衣を着た女の子がTシャツ短パン姿の男の子と歩いているのを見た。カップルだろうと思ったが、彼らも先ほどの子たちと同じ方向へ歩いていくのだ。  お祭りでもあるのだろうかとは思ったが、私には関係ないのでそれほど気にすることもなく、さっさと買い物を済ませて家路を急いだ。  家の前まで帰ってくると、恵美子さんと近所の奥さんがおしゃべりをしているのを見かけた。そのまわりには幼い男の子と女の子が浴衣姿で走りまわっている。 「こんにちは。今日はお祭りでもあるんですか?」  と私が挨拶がてら訊ねると、恵美子さんが近づいてきた。 「あら朔也ちゃん、こんにちは。今夜は河原で花火大会があるのよ」 「そうなんですか」  早い時期にあるんだなあと思った。 「そうだ。朔也ちゃん、ちょうどいいわ。うちに来て」 「え?」  よく意味がわからなかったが、私はとりあえず購入した食材を冷蔵庫にしまってから恵美子さんの家に向かった。  恵美子さんの家は白川家から徒歩1分ほど。もちろんはじめてお邪魔する。少し狭い路地の奥にある小さな木造2階建ての家だった。そこを訪れると恵美子さんは私を2階の部屋へと連れて行き、うきうきした表情で私を着替えさせたのだった。  まさか、浴衣を着せられることになるとは思わなかった。
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