5、境界線を越えた夜

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 賑やかでキラキラした世界が、すぐそこにある。お祭りなんて子供のためのものだと思っていたけれど、久しぶりに訪れるとこんなにわくわくするなんて思いもしなかった。 「朔也さん、楽しそうですね」  そう言われて我に返ると途端に恥ずかしくなってしまった。 「すみません。子供の頃以来で、懐かしくて……」 「謝ることないですよ。何か食べますか?」 「え? えっと……」  私は混雑したいろんな屋台を見まわした。りんご飴とかすっごくおいしかった記憶があるし、とうもろこしが焼ける香ばしい匂いがしてくるし、たった今となりで通り過ぎた人が手に持っていたたこ焼きから湯気が立っているのを見てそれもいいなあって思うし、ふわっふわの綿あめを口にしたい気持ちもある。 「どうしよう。決められないです!」  私はつい子供みたいな声を上げてしまった。  孔明さんは「あはは」と笑ってひとつの提案を口にした。 「それでは順番に行きましょう」 「順番?」 「近いところから順に、朔也さんがほしいものを全部買います」 「え? そんな贅沢なことはできません」 「子供の頃以来なんでしょう? だったら、存分に楽しんだほうがいい」  孔明さんはそう言うなりさっさと人混みへと紛れていく。  私は慌てて彼のあとを追った。  こんなこと、はじめて。  楽しいよー!
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