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顔が熱い。
今日はやけにお酒のまわりが早いなあと思った。もしかしたら最近あまり飲んでいないから体がアルコールに弱くなってしまったのかなとか。
そんなことを考えながら、私の心臓はドキドキしている。
孔明さんは私を見てにっこりと微笑んだ。
「大人数で騒ぐのも悪くないですが、こうして静かに過ごすほうが僕には合っている。朔也さんはいかがですか?」
彼の口調は淡々として落ち着いている。
それはまるで、私のことがわかっているとでも言うような口ぶりだ。
「私も、静かに過ごすほうが好きです」
「そうでしょう。朔也さんはどこか、僕と似ている」
似ている。それは性格という意味ではなくて、きっと“雰囲気”だ。孔明さんは私とはまったく違うオーラを持っていて別世界の人のように見えるけれど、私たちはお互いのまわりに流れる空気がぴったりと一致しているように思える。
私は彼に言えない過去を持っているけれど、おそらく彼もそうなのだろう。それも、人生を狂わせるほどの何か、だ。
孔明さんは平静を保っていたが、私を見て急に慌て出した。
「あ、すみません。僕と似ているなんてあまりいい気はしませんよね」
孔明さんは苦笑しながらお酒をぐいっと飲み干した。
私は小さく首を横に振って「いいえ」と答える。
そして彼をまっすぐに見据えた。
「私たちは似ていると思います」
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