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花火の音。息遣いの音。唇の触れ合う音。
汗の混じった肌の匂いと、古い畳の匂い。
お酒の混じった甘い味。
吐息と肌の触れ合う感触。
室内を照らす蝶の提灯。
五感すべてが研ぎ澄まされて、艶めかしい空気に酔わされる。
何度かキスを繰り返していたら、私の頭はもう正常な思考力を失っていた。すべてのことがどうでもよくなって、ただ快楽に身を委ねている。
そこにあるのは烈しさを増していく高揚感と完全に力の抜けきった開放感。そして心地よい安心感だ。
私たちのあいだには恋愛における喜びの拍動もなければ、あふれ出る情感もない。
ただ、目の前の異性を体が求めているだけ。
孔明さんは真顔で私の体に視線を落とし、丁寧にその過程を踏んでいく。私の腰に強く結びつけられていた帯は彼の手によっていとも簡単に崩れていった。緩んだ浴衣が胸元からはだけて、私の上半身が露呈する。
なんだか少しおかしくなって、私はふふっと笑った。
「脱がせるの上手」
「浴衣なので」
孔明さんは軽く笑みを浮かべながら私の帯を完全に解いてしまった。恵美子さんの手によって美しい形を保っていた帯は、今となってはのっぺりした布地に過ぎない。
「残念。もう浴衣を着られないかも。私はあんなに綺麗に帯を結べないもの」
そう言うと、孔明さんは静かに答えた。
「いつでも着せてあげますよ。恵美子さんより上手く着せる自信があります」
「そうね。あなたはきっと、もっと上手だわ」
孔明さんは何も言わず、口もとに笑みを浮かべたまま目を細めた。
前にも思ったけれど、その表情、結構好き。
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