6、崩れた雇用関係

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 今日の朝食は玉子焼きと小松菜炒め、タラの塩焼き、そしてしじみ汁だ。主も昨夜は相当お酒を飲んでいるはずだから、軽めの食事がいいかなと思った。  テーブルに料理を並べていると、廊下から物音がしたのでどきりとした。  平常心、と胸中で呟く。  孔明(よしあき)さんは昨夜とは違う紺青(こんじょう)の浴衣をゆったりと着ていて、後頭部には思いっきり寝癖がついていた。 「おはようございます」  と私は背筋を伸ばし、しっかりとした声で挨拶をした。  彼は一瞬驚いたような顔をしたが、頭をかきながらわずかに微笑んで会釈をした。 「おはようございます」  と彼は寝惚けたような声でゆっくりと言った。  なんだ。ぜんぜん、大丈夫だ。このまま普通にいつもどおり過ごしていればいい。  温かい白飯を茶碗に盛り、しじみ汁をテーブルに置いた。 「いただきます」とふたりで言って、食事をはじめる。しかし、そのあと妙な沈黙が訪れ、なんだかそわそわした。ちらりと孔明さんを見ると、彼はずっと目線を下に向けたまま黙々と食事をしている。  私は業務的な話をすることにした。 「今日はいつもどおり、お仕事ですか?」  私はほぐしたタラの身をご飯に乗せながら訊ねた。 「……そうですね」  と彼は静かに答え、しじみ汁を飲んだ。 「昼食も、いつもどおり用意しておきますね」  私は淡々とそう言って、ご飯をひと口食べた。  孔明さんは汁椀をテーブルに置いて小さなため息をつく。 「……少し、遅くなるかもしれません」  私はちらりと彼を見て「わかりました」と答えた。  会話が、ぎこちない気がする。
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