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昼を過ぎた頃から陽射しがさらに強くなると、女性陣は屋内へ避難した。恵美子さんと50代の女性は用事があるからと帰っていき、残ったのは20~30代の女性ばかりだった。リビングのテーブルを囲んでソファに並んで座る人と床に直接座る人で集まり、みんなが持ってきてくれた焼菓子を食べながらコーヒーを飲んだ。
彼女たちは白川さんの昔話をしてくれるので、私はそれに聞き入った。白川さんは今とそれほど変わらなかったらしく、驚くような情報はなかった。だがしかし、私にはとても気になっていることがある。
「あの、白川さんの字がどうしても読めないんだけど、やっぱり私が読めないだけなのかな?」
すると女子たちは目を丸くして、それから急に吹き出した。
「そうそう。あたしたちも読めない」
「だって先生の字、独特すぎるもんね」
「あたしたち、こうめい文字って呼んでるんだよね」
彼女たちの話を聞いて、私は安堵した。
なんだ、私だけじゃないんだ。
「それで教室なんかやってて大丈夫だったの?」
私はさらっと本音を漏らしてしまった。
すると彼女たちは笑いながらも補足した。
「あのね、私たちに教えるときはすっごく綺麗に書くの。それこそ教本どおりにね。でも、自分の作品を書くときはこうめい文字なの」
「下手なわけじゃないの。個性が強すぎて読めないの」
「行書をぐちゃぐちゃにした感じだよね」
「一見、汚く見えるんだよね」
「メモ書きは普通に汚いでしょ」
「楷書で書いてほしいよね」
結論。結局白川さんの字は読めないということだ。
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