4、近づいていく距離

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 彼女たちの話によると、白川さんは昔、雑誌とかメディアの取材も受けたことのある腕前なのだとか。にわかには信じられないが、もしそうであればなぜやめてしまったのだろうという疑問がさらに深まる。  忙しいとは言え、完全にやめる必要があるだろうか。  そんな疑問に耽っていると、誰かがふと言った。 「そういえば今日、一花(いちか)ちゃん来ていないよね」  その発言に、他の誰かが反応した。 「来るわけないじゃん。理久がいるのにさ」 「あ、そっか。さすがに気まずいよね」  私はそのまま聞き流すべきだったのだろうが、なぜか口が勝手に滑った。 「その子も生徒さんだったの?」  訊ねると彼女たちは急にわくわくした表情で話し出した。 「そうそう、理久の元カノ」 「この教室で出会ったんだよね。一花ちゃんは生徒で、理久はこうめい先生の弟みたいな感じだったからよく遊びに来てて……なんか、卒業するくらいに付き合いはじめたんだよね」 「びっくりしたよね。一花ちゃんは大人しくて理久とは正反対の性格だから」 「うまくいくのかなって思ってたけど、結構長続きしたんじゃない?」 「あれ? 途中で別れたんじゃない? たぶん大学のときに」 「いつヨリを戻したんだっけ?」 「就職して一花ちゃんが地元(こっち)に戻ってきてからよ」 「でもさ、結局うまくいかなかったよね」 「だって、ふたりとも趣味も性格も合わなかったし」 「どっちから告白したんだっけ?」 「理久だよ。ずっと好きだって言ってたじゃない」  女子のトーク力ってすごい。  訊いてもいない情報をどんどん提供してくれるのだから。
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