4、近づいていく距離

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 夕方まで女子同士で散々おしゃべりをしていたら、いつの間にかバーベキューの後片付けはすべて男性たちがしてくれていた。理久くんが結構てきぱき動くタイプの子なので、彼が主導しながら庭はゴミもなく見事に綺麗な状態に戻っていた。 「ありがとう。全部やってくれたんだね」  と私が声をかけると理久くんは明るい笑顔を向けた。 「騒がせてもらったし、当然のことだよ。朔也ちゃんも疲れただろ? 今日は休ませてもらいなよ」 「うん、そうする」  と私は軽く返事をした。  いい子だなと思った。それでも、前の彼女とは長く付き合ったけれど上手くいかなかった。けれど、そのあと付き合った子とはトントン拍子で結婚してとても上手くいっているらしい。  自分と合う人との出会いって、奇跡なのかもしれないなと思う。  みんなが帰ったあと、私は食器などを洗って、玄関の掃除をした。そうしていると白川さんが袖をまくり上げたまま玄関まで出てきた。 「トイレ掃除は終わりました」 「ありがとうございます。こっちも終わります」  彼は掃除を手分けしてくれた。私がいないときもそうすればいいのに、とは思うけれど、むしろ私がいるからやる気が出るのだろう。 「お礼を言わなければならないのは僕のほうです。喜多さんのおかげで久しぶりに楽しい時間が過ごせました。本当にありがとうございます」  白川さんは軽く頭を下げた。 「いいえ。私も、とても楽しかったです。こんなふうに大勢で食事をしたりおしゃべりをするのは久しぶりだったので、本当に楽しかったです」  私は楽しかったを連呼するほど、満たされていた。自由な世界に羽ばたいた実感を今日は本当に感じた。人と会うってこんなに楽しいんだなあって。
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