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不思議に思ったが、私も紅茶のカップを置いて彼の話の続きを聞いた。
「彼はあなたとは初対面なのに、少し馴れ馴れしいのではないかと思ったのですが、そんなことはありませんでしたか?」
馴れ馴れしいというよりは、誰にでも明るいから話しやすい人だとは思ったけれど。
「性格がそうなんでしょうね。悪い気はしませんでしたよ」
さらりと返すと、白川さんの口調がやや強くなった。
「いや、まあそうなんですが」
彼は私から目を逸らし、目を細めて宙に視線を走らせた。
何か気に障ることでもあったのだろうか。
「……白川さん?」
「名前……」
「え?」
白川さんが目線だけ私に向けた。
「喜多さんのことを名前呼びしていましたね」
「歳が近いので、自然にそうなったんでしょうね」
当たり前のことを返したつもりだが、白川さんは急に曇った表情をした。
え、何……? 今までにないくらい、彼の表情と言葉に余裕が感じられない。一体どうしたというのだろう。
「白川さん?」
「理久くんは悪い子ではないんです。ただ、自分を強く主張する傾向があるというか、恵美子さんとは別の意味で我が強くて……」
白川さんの台詞とは思えない。
仲、いいんだよね……?
それを疑っていると、彼が続きを話した。
「積極的なのはいいことですが、初対面なのだからもう少し遠慮ってものをですね……」
白川さんは眉根を寄せて私から視線をずらす。
少し焦りを感じて私は慌てて返した。
「大丈夫ですよ。私は気にしませんので」
「僕が気にするんですよ」
白川さんは急に視線を私に戻し、目を細めた。
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