4、近づいていく距離

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「まさか、白川さんがそんなことを気にするなんて」 「すみません。大人げないことはわかっていますが、僕は昔から理久くんに少々苦手意識を持っていまして……」  いつも余裕なオーラを漂わせて、誰とでも上手に人間関係を築けているように見える彼に、まさか苦手な人がいるなんて思いもしなかった。いや、人間なんだから、そりゃひとりかふたりくらいはいるよね。  しかし、それならどうしてという疑問を抱く。 「それなのに理久くんを家に呼んだんですか?」  私はストレートに訊いてみた。すると白川さんは気まずそうにしながらゆっくりと返答した。 「先ほども言いましたが、彼は悪い子ではないんです。僕にとっては弟のようなもので……僕には三人の兄がいますが、兄弟間というのは仲がよくても喧嘩したりお互いの性格や能力などに嫉妬したりするものでしょう? 理久くんは僕にはない明るさや積極性があるので、まあ本当に大人げない話ですが、彼に嫉妬しているのです」  それを聞いた私はまたもや不思議に思い、言葉に詰まった。比べるところではないのだろうけれど、白川さんが嫉妬するほど理久くんは魅力的な男性とは思えないのである。いい子なんだけどね。 「そうなんですか」  と私はあえて何も言わずに彼の発言に頷いた。すると、白川さんは私に軽く頭を下げた。 「巻き込んでしまってすみませんでした」 「いいえ。むしろ、よかったです」 「え?」 「めずらしい白川さんを見ることができたので」  すべてを悟りきっていつも余裕のある人よりも、焦ったり素を出したりする人のほうが、私は好感が持てる。
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