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13 キャンプファイアー
教室の模擬店は売り切れ御免の張り紙をして売り子もいないところが増えていた。人の流れが徐々に校庭に向かう。クライマックスのキャンプファイアーに集まりだしている。
氷室も人に押し流されるように校庭に歩いていた。日が落ちて、空は蒼黒く輝きを失いつつある。校舎から体育館の前を過ぎて校庭へと階段を下りていく。広い階段の下りきった底がグラウンドで、トラックの中心に太い角材が組み上げられて、カップルたちがすでに円形に囲んで待っていた。
屋外のスピーカーからフォークダンスの曲が流れ出し、角材に点火された。カップルは火を囲んで踊りだす。
フォークダンスに参加できない一人者たちは、グラウンドを見下ろす階段の上にたむろしていた。無言で見つめる者、ヒューヒューと冷やかしの声を上げる者、そうやって悔しさを紛らせるかのように。
氷室も大階段の上からフォークダンスを見下ろす。あいつもこいつもカップルになっている。自分も田中澪とフォークダンスを踊りたかった。その気持ちがあったことは認めざるを得ない。結局、丸一日探して見つからなかった。今日、彼女は休みだったのだろうか?
ようやく炎を上げ始めたキャンプファイアーの光に照らされている女子の顔。田中澪のちょっと緊張した顔。男子に手をとられている。肩を抱かれ、曲に合わせて回って、男の腕の中に納まった。
彼女と踊っている男は氷室も知っていた。氷室と同じ中学出身で、同じ列車で高校に通っている、昔の同級生。今は田中澪と同じ理系のクラスだ。
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