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高2の夏、インターハイ
氷室健介は、夏休みまで高校の山岳部員だった。八月のインターハイ山岳競技全国大会の県代表に選ばれ、出場後、山岳部を辞めた。
山岳部の活動は、普通の登山で、土日に一泊二日で近くの山を登り、長期休暇には三泊四日でアルプスの山を縦走するというものだ。インターハイで何を競うのかというと、登山に関する全技術だ。
各県代表の高校は四人一チームで出場する。大会会場となっている山域を三泊四日の工程で、定められたコースで登山する。その中の作業や技術を審査員が点数づけして、その総合得点で順位が決まる。
登山の速さだけではない。テントの張り方、食事の作り方やその内容、地図とコンパスで自分の現在位置を把握する。等圧線を日本地図に引いて明日の天気の予測をする。リュックに詰めた荷物の重さや詰め方も審査対象になる。
氷室は高二ながら、三年生の先輩たちに交じって、県大会のチームの一員に選ばれた。県大会優勝を目指して、三十キロの重さのリュックを背負って階段を上り下りしたり、土曜日にリュックを背負ったまま自転車で低山に向かい、頂上まで往復する練習をした。ザイルを使った壁登り、チームで息を合わせてテントを張って、いかに時間短縮できるか、カレーを作る練習。彼は一生懸命にやった。
県大会で優勝して、氷室たちが県代表になった。練習の成果が出て、氷室は嬉しかった。インターハイの直前には、体育館に全校生徒を集めて壮行会を開いてもらった。
彼らには目標があった。彼らの高校も含めて、今までの県代表は、常に十数位だった。自分たちはその上、七位以内に入賞しよう。
大会本番、山行の途中、氷室はひどい下痢と腹痛から、まともに歩けなくなってしまった。彼には初めてのことだ。チームは登山のペースを落とさざるをえなかった。成績は四十七チーム中三十八位。その後、氷室は部を辞めた。
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