狂気の果て

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狂気の果て

 アドルフの母──先代国王の妃のことだ。それは当然ルドルフも勿論、国民なら誰もが知っている。  彼の母は、魔物に襲われて亡くなった。元々は隣国の姫だった彼女は、兄の戴冠式の(しら)せを聞き、出席するために馬車で従者と共に移動していた。その途中の夜の森で、従者共々魔物に無惨な殺され方をしたという。朝になり、通りかかった猟師が発見した時には手遅れだった。  ただ、馬車の荷台の奥にいた赤子だけが無事だった。母親が魔物に襲われぬよう押し込んだのか、あるいは赤子の生存本能で自ら隠れたのか──それはわからない。  ──その赤子が、アドルフだった。
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