迷惑な発明おじさん

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「おーい、居るか?」 (この声は……) 僕は音を立てないようにそっと立ち上がり、部屋へ入った。 叔父さんだ。しかも、ヘンテコな発明品を持ってきては自慢気に長々と語って、しばらく居座ってしまう厄介な人なのだ。 と、不意に部屋のドアが開いた。 「なんだ居るじゃないか!居るんなら返事くらいしたらどうなんだ!それとも、俺に居留守使おうってか?」 ハッハッハッと、大きな声で笑いながらベッドへ腰掛ける。 「別に、そういう訳じゃ……」 ちょっと口ごもりながら、上目遣いで叔父さんの顔を覗いた。汚いと感じない無精髭。綺麗に整えられた白髪の頭。ちょっと、カッコいいと思ってしまう。 おそらく、世話焼きな叔母さんに全て任せているのであろう。なんたって、上下ジャージ! このセンスは叔父ならではである。 「今度のは、かなり期待していいぞ」 叔父は、言いながらジャージのポケットから、リモコンらしき物を取り出した。 「またリモコン?」 「またって何だ!失礼だな」 「だって、そうじゃない。最初は冷蔵庫の自動開閉……冷蔵庫の自動開閉って意味ないから。次は炊飯器の自動開閉って……実用性全くないじゃん」 「まあ、そう言うな」 自信満々の笑みを浮かべる叔父に、少しずつ苛ついてきた。 「……で、今度は何を開閉するの?」 「今回のは、今までと全然違うぞ」 叔父は、リモコンを僕へ向けて何やら操作する。 すると、全く口が開かなくなってしまった。どうやら、今回の発明品は口の自動開閉のようだ。
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