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私がアカネさんの視線の先を見ると、
今まさに優香ちゃんが冷たい対応でお弁当を渡している場面であった。
アカネさんがコソコソと話し始める。
「あれを塩対応と決めつけるにはまだ手がかりが足りないんじゃないかい?」
私はその言葉に首を傾げる。
「私には塩対応にしか見えませんが…」
そう言うと、アカネさんはガッカリしたような顔でこちらを向いた。
「君。それでもワトソンかね。」
『いえ、ワトソンじゃありません』
そう言いたくなるのをグッと堪える。
いくら私がワトソン役といえどもアカネさんより
背が小さく、非力で推理力さえも劣っている私に期待をしてはいけないと思う。
「はぁ、焼肉定食ですか。」
優香ちゃんの声はいつもからは考えつかないほどつっけんどんだ。
「じゃあ何個か仮説を立ててみようよ」
アカネさんはいつの間にか顔をこちらに向けていた。
「ほら、何かあるじゃん?」
「何かとは何です?」
「鈍感だなぁ」
私はその言葉にいくらかムッとしたが、
答えのわからない私にとって、
ここで怒っては元も子もないことは明らかだった。
「わからないので教えてください」
「よかろう」
アカネさんは思っていたよりすぐ仮説を教えてくれた。
「例えばだけどさ」
私は首を縦に振り、催促する。
「優香ちゃんがその人の事を好きとかってない?」
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