仮説1

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仮説1

「は、はぁぁぁぁぁあ!?」 「声が大きい!バカワトソン!」 それはもうワトソン本人に失礼なのではと思ったが、 声に出すのは辞めておいた。 アカネさんは私の方を向くとジト目で言った。 「一つの仮説だから。一々間に受けずに。」 「あ、そうか。」 そ、そうだよね。 まさかあの優香ちゃんが… こ、恋するだなんてあり得ない。 その仮説をブンブン首を振って消しとばした。 「ほ、他の仮説は無いんですか?」 「私ばっかりに頼らず君も考えるんだ。」 「うーん…」 私は考えを張り巡らし、一つの可能性を見つけた。 「道場の先輩が来たとか!」 「え、心ちゃん道場なんか行ってるの…?」 「はい!空手を少し。一応黄帯なんですよ!」 「へぇ…凄いんだね。」 「そういうアカネさんだって合気道やってたじゃないですか。」 「かじってただけだよ。」 そんなこんなを言っている最中に 優香ちゃんは頼まれた焼肉弁当を渡して次の客の接待にあたっていた。 「混んできたね。」 「そうですね。私も接待に戻らないと。」 「私も家帰って風林火山の世話しないと。」 「風林火山?」 「夏音(ナツネ)のことよ。」 アカネさんは憎々しそうな顔で家の方角に顔を向けた。 「妹さんでしたっけ?」 「いや、まぁ…それより面倒だけどそんなもんだよ。」 「はぁ…?」 ごくたまにだが、アカネさんは少し変な事を言う。 どこが変なのか、と聞かれると言えないのだが。 まぁ、人は皆何かしら秘密があるものだし。 そう思って私は制服のエプロンの紐をギュッと縛った。
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