10人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
声の方へ視線を向けると猫の被り物のせいで表情は見えないが、明らかに怒っているだろうハセさんと心配そうにボクを見つめるヒロシがいた。
『ミコ、いきなり走り出してどげんしたんばい』
「知らないプレイヤーに気安く話しかけるなとあれほど言っていただろうが」
『ごめんなさい……』
「あなた方はミコくんの知り合いの方ですか?」
ミコくんと呼ばれるのが不思議とむず痒い。
なんだか、レイからは蘇芳と呼ばれる方がしっくりする気がする。
相変わらず陶器のように貼り付けられた笑顔を向け、ハセさんとヒロシに対して仰々しく頭を下げた。
「私は、レイと申します。実はミコくんが知り合いに似ていたもので……ご迷惑をおかけしました」
本当はボクの方から声をかけたはずだけど……レイは頭を下げ、何事もなかったかのようにボクたちの前から立ち去ろうとした。
ここで彼女と別れてしまったら二度と会えない。
そんな気がして、ボクは思わず彼女の脚にすがった。
『待って!』
一瞬、迷惑そうな表情を浮かべたレイだったが、すぐに貼り付けた笑顔に戻った。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
本当なら、ハセさんやヒロシにも相談するべきだとは思うけど、迷っている場合じゃなかった。
『レイ、良かったら君も一緒に狩りに行かないかい?その……条件はあるけど……』
その一言はレイだけでなく、ハセさんとヒロシも驚いていた。
でもきっと、二人も条件を聞けば分かってくれると思う。
ただ正直、この条件をレイがのんでくれるかどうか不安だった。
最初のコメントを投稿しよう!