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スマートフォンの画面をタップすると、時刻は20:52だった。高揚感を覚えた私は、ノートパソコンの電源を入れ、冷蔵庫の中から缶チューハイとスイーツを取り出した。
椅子に座った途端、真衣香からLINEのメッセージが届いた。「待機中」とのことだった。私たちは予定より少し早く第2回のオンライン飲み会を始めた。
「美雪、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう!一足先に30歳を迎えてしまったよ」
「私も来月で30歳だー。嫌だなぁ。30歳になって何か変わった?」
「特に何も」
私たちは笑い合った。
「あっ!私が贈ったネックレス!早速つけてくれているのね」
私は身につけているネックレスを手で触りながら「真衣香からのプレゼント、すごく嬉しい。本当に素敵。どうもありがとう。大切にするね」と礼を述べた。真衣香は無邪気な笑顔で「とても似合っているよ」と言ってくれた。
「ねえ、乾杯しようよ」
「うん!」
私たちは桃の缶チューハイを開封し画面越しに乾杯した。お酒の好みも似ているのである。
私は早速、引っ越しを決意した理由について話そうと思ったが、真衣香が「...ねえ、美雪。ちょっと相談したいことがあるんだけれど、いい?」と言うので、先に真衣香の話を聞くことにした。
「いいよ」
「美雪の誕生日にこんな話をするのは本当に申し訳ないと思うんだけれど、私は今、泣きそうなくらい切羽詰まっていて...」
「どうしたの?」
「...仕事でね、大きなミスを連発しちゃったの。今週だけで3つも。私、アパレル商品を取り扱うネットショップ運営の仕事をしているでしょう?たとえば出荷時のミスでお客さんから“注文した商品と異なる物が届いたんですけど一体どういうことですか”ってクレームがきたり...。そういうミスが多くてさ。だから私、責任を取って辞めようと思っているの...。最近、なんだか体が重いし、思考力や集中力が低下している気がするんだよね。このままだと私、会社にもっと迷惑をかけちゃう」
「それって、鬱じゃない?」
「...恐らく幽霊のせいだと思う」
「えっ?」
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