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私は東京に住み、真衣香は大阪に住んでいる。真衣香の部屋に現れる幽霊がかつて私の部屋に現れた幽霊と同一、ということはあり得る話なのだろうか。ひとつ確かなのは、私が今いるマンションでは幽霊の気配すら感じないということである。
真衣香が「やっぱり同じ幽霊ではないと思うよ。仮に女の霊が美雪の部屋から私の部屋に移動したとして、空白の10ヶ月をどう説明する?」と口を開いた。
「そうだよね。とにかく真衣香は、管理会社に連絡して、ただちに引っ越したほうがいいよ」
「うん、そうする。ごめんね、今日は美雪の誕生日なのに」
「実は私も今日、引っ越しを決意した理由を真衣香に話すつもりだったから、ちょうどよかったよ」
「そうだったの?」
「うん。ねえ、ここからは楽しい話をしようよ」
「そうだね。今は幽霊の気配も感じないし、そうしよう」
私たちは、恋の話に花を咲かせ、好きな男性の服装について語り合った。そしてその後、レディースファッションの話になった。すると真衣香が「ねえ、美雪。2人でオンラインファッションショーをやろうよ。今年買った服を着て、互いに見せ合うの」と提案した。
「いいね、やろう」
「ジャンケンで勝った方が先行にする?」
「うん、いいよ」
勝ったのは私だった。私は、クローゼットの中からカーキのサロペットを取り出して、真衣香に見られないよう脱衣所で着替えた。
「じゃーん」
真衣香は、ノートパソコンの前に立った私を見て、「いいね!サロペット姿、すごく似合っているよ」と言ってくれた。
「ありがとう」
次いで、真衣香がグレーのニットワンピース姿に着替えてモデルのようなポーズをとった。
「それ、可愛い!」
「でしょう?すごく気に入っているんだよね」
真衣香の満面には、喜色が表れていた。
私が2着目に選んだのは、フリマアプリで購入したベージュのコーデュロイジャケットだった。それをサロペットの上に羽織ってノートパソコンの前に立つと、真衣香が「私もそういうメンズライクなのが欲しい」と羨ましがった。そして「私も最近フリマアプリで服を買ったよ。羽織ってくるから、ちょっと待っていて」と言ってパソコンの前から離れた。
私は、真衣香がその服を羽織りに行っている間に、缶チューハイをぐっと飲み干し、2本目を開封した。
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