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「お待たせ。どう?おしゃれでしょう?」
私は真衣香を見て驚倒し、チューハイをこぼしそうになった。
「...それって、どこから届いたの?」
「確か東京だけれど、なんで?」
「タグを見せて!」
「タグ?いいよ」
タグを見た私は、まるで時が止まったかのように絶句した。そして、もしかしたらとんでもないことが起こってしまったのかもしれないと戦慄を覚えた。
「ねえ、美雪。一体どうしたの?」
「...そのコート、おしゃれだよね。私もね、そう思ってフリマアプリで同じコートを買ったの。でも、すぐに手放した」
「えっ!ひょっとして私、美雪から買ったの?」
私は、唇を固くむすび、首を横に振った。そして目を閉じて大きく息を吐いた後、「違う。そうじゃない」と言って目を開いた。
「じゃあ何?なんで美雪、そんなに怖い顔をしているの」
私は、思わずノートパソコンの画面から目を逸らし、俯きながら震える声で話し始めた。
「...私ね、引っ越す日の前日に、それと同じ赤いチェスターフィールドコートを都内の古着屋さんで買い取ってもらったの。真衣香がフリマアプリで買ったそのコートがもし、私が古着屋さんに売った物だとしたら、10ヶ月間で何人か経由して真衣香の手に渡ったことになる。古着屋さんで購入した人を仮にAさんとすると、そのコートはAさんが出品したものかもしれないし、そうじゃないかもしれないのか」
「...そっか。引っ越しの荷物を減らすために美雪がコートを売って、巡り巡って私のもとに届いたんだとしたら、すごいことだよね」
「違うの!」
私は間髪をいれず否定した。
「私がコートを売ったのは、引っ越し前に気づいたからなんだよ。コートが自宅に届いた日から、女の霊を見るようになったことに」
「えっ」
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