3/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「あーそうだ、お願いがあるんだけどさ。今日の放課後助っ人として部活に手伝いに来てくれない? マネージャーの子が休んじゃってさ仕事まわんなそうなんだよねー」  山瀬は顔の前でパチンと手を合わせた。不自然にパチパチと瞬きを繰り返す。お得意のあざといポーズ。その愛らしいルックスを武器に数々の男子生徒を虜にしてきた魔性の女。しかし、俺はその手には乗らない。 「なんで俺なの? 上尾とか連れていけばいいじゃん」  昼食を食べ終えてスマホをいじっている上尾に目を向けた。上尾は俺の言葉を聞いて目を輝かせる。 「え? なになに? 山瀬の部活の助っ人ってことは女子バスケットボール部(女バス)だろ! 女バスの子たち可愛い子が多いからな~ぜひ俺に引き受けさせてくれ!」  上尾は鼻息を荒くして言った。余程女子に飢えているらしい。山瀬は不満げな表情を浮かべ腕を組む。 「えー上尾はビミョーかなぁ……ぶっちゃけ言って祐が来た方が、部員のやる気上がるんだよね。うちの部活、祐のファン多いんだよ」 「ちゃっかり人のことディスってるんじゃねえよ…………」  二人の会話に苦笑しながら俺は少し考え込んでいた。山瀬の話からは、手伝いに来てほしいのではなく部員たちの目の保養になってほしいと言っているように聞こえる。それに、昨日告白してきた子は確かバスケ部だったような気がしなくもない。余計に気が引けてしまう。どうにかして上尾に助っ人を押し付けられないだろうか。  その後、山瀬と俺の間で不毛な押し問答が繰り広げられ、結局俺は頼みを受け入れることになった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!