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重りを外して誰かにその重さを感じてもらうことができたら、少しは心が軽くなるだろうか。ありのままの自分をさらけ出すのは怖い。俺はいつでも周りが望んでいる「女子にモテて、泰然自若とした渡祐」でありたいと願ってしまうから。
だけど、このままじゃ沈んで沈んで息ができなくなることを分かっているのだ。それならば、重りを外して水面に手を伸ばすしかないのだろう。
分かっている分かっているのだ。拒絶される覚悟くらい持たないと、自分はもっと壊れていくことを。
「…………先生」
「うん? どうしたの?」
笛吹先生はキーボードをたたく手を止め、パソコンから顔を上げた。
「すげーくだらない話なんだけど…………聞いてくれる?」
俺はきゅっと目を閉じて、固唾をのむ。
「いいわよ。渡くんの気が済むまで話してちょうだい」
その一言に安堵した。くだらない話。今まで誰にも言えなかった話。それは俺の苦しみと孤独の話。
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