妖精とプリン作り

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妖精とプリン作り

「恭子、わしを台所まで連れてってくれ」 「いいよ」 両方の手のひらををヨソプの足元に広げると 太っちょ妖精がヨイショと乗ってきた。 なんか…可愛いやらおもしろいやらで 思わず笑ってしまう。 「何がおかしいんじゃ?」 「だって手のひらにおじさん乗せてるなんて、 ウケる」 「だからおじさんじゃないぞよ」 「ごめん、ごめん」 恭子は謝りながらも笑いが止まらない。 「恭子、足元が揺れて怖いぞよ」 「ごめーん、気をつけて運ぶね」 ヨソプを台所までゆっくり運ぶと コンロの横にそっと降ろした。 「ひとつしかないんぢゃな、ここは」 ヨソプがコンロや鍋を指して言う。 「だって一人暮らしだし、料理しないし…」 「人間のオンナは料理しないのか?」 「人によるかな。あたしは苦手。食べるのは 好きなんだけどさ〜」 「さみしいのお。プリンは簡単ぢゃから、 覚えるとええ」 「ヨソプの言葉ってさあ…」 「ん?なんぢゃ?」 「ちょいちょい関西弁入ってない?(笑)」 「関西弁?なんぢゃ、そりゃ??」 「ククク…何でもない」 なんか楽しい。どうしてかな? そっか…田舎のおじいちゃんと とんちんかんな話してる感じに似てる。 言葉のキャッチボールができてないのに そのちぐはぐな感じに癒される…みたいな。 「卵と牛乳と砂糖を出してくれ」 「はあい」 料理をしない恭子でもそのくらいの材料なら 家にあった。 「ボウルはあるか?」 「ないなあ…」 「ぢゃあ、どんぶりとかお椀は?」 「あ、ラーメン鉢ならあるよ!」 「それでやろうかの。 まずは牛乳をレンジでチンぢゃ」 「温めるんだ。わかった」 恭子はマグカップに牛乳を入れて レンジで温めた。 「やかんでお湯を沸かしとこう」 「お湯?使うんだ。了解」 お湯を沸かして…と。 「卵を2個ここに入れるのぢゃ」 「オッケー」 ラーメン鉢に卵を割って入れる。 ヨソプが箸を両手に持ち、 ひいひい言いながらかき混ぜているのが 妙におもしろい。 「大変そうだから、あたしがやるよ」 「ぜいぜい…頼む…ぜいぜい」 苦しそうなので、ヨソプの背中を小指で そおっとさすってあげた。 あれ…なんかゴツゴツしてる…? 「羽根ぢゃよ、羽根」 「そっか…」 妖精だもんね。 かき混ぜた卵に砂糖と温めた牛乳を入れて 更に混ぜる。 それを何か入れ物に…、湯呑みとか小さな腕で いっか。プリン色の液体を入れよう。 「入れる時はざるでこすんぢゃぞ」 「こす?」 「プリンがなめらかになるのぢゃ」 へぇ〜そっか…なるほど。 こうやってみると、料理っておもしろい。 しかも大好きなプリンが作れるなんて…。 「フライパンにフキンを敷いて、お湯をそこに 入れるのぢゃ。」 「フライパンで作れるの?すごい〜」 プリン液を入れた湯呑みや小鉢をそこに入れて フタをして弱火にかける。 「15分ほど蒸し焼きにするのぢゃ」 楽しみだなあ〜…。
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