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食事が終わりこのホテルの人気の洋菓子が盛られてきた。
ティーポットを受け取り、ふたつカップに注ぐと、好きなお菓子に手を伸ばす。
「昨日夢の中に入ったって…出来たんですか?」
「コツを掴むまで結構掛かったけど…始め彼女の視線を追いかけてそれを夢の男にも追いかけさせる」
「その男の人はその通り見るんですか?」
「え…信用してない?その男の目を自分が見る感じで動かしていきました」
「え…」
「本当のことです。時間は掛かったけど彼の目を使って、彼女の見ていたものを見ることが出来た」
「男でした。隠れてそっと見ていた…若旦那風のいい男」
………………
「君のあの男にそっくりの…」
…あんな想いをしたのに、それでも…見ずにはいられないのか…あの人を…
………見たくないのに…見ずにはいられない………
「いつからか、その男をいつも視野に入れて…意識するようになってました。そしてその内に不思議な事に気が付きました」
「…不思議?」
「男は結婚して数年もたつと居なくなるのです」
「いなくなる?」
「そうです。婚家先が潰れたり、火事で全て失ったり、盗賊に襲われて根こそぎ持って行かれる…」
え…………
「男は表舞台から消え、その先は分からないのです」
「…どうして…」
「まさしく、どうして?です」
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