夢の男

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「上手いことやったよな…」 「逆玉?お嬢様が奴に夢中とは聞いてたけど…ホントに結婚しちゃったな」 「あ…入場だぞ」 ウエディングマーチとともに二人が入ってくる… 彼の傍らには華やかな常務の長女…お似合いな二人 こんな式なんて出たくなかった…でも部署の皆が出るのに欠席する訳にもいかなかった。 彼との2年間は心に潜む怯えとの戦いだった… ても私はほんの少し思っていた… 今度は私を選んでくれるのじゃないか… 裏切るなんて信じられないほど愛されてると感じていた…いたのに… 「あ…二次会行かないの?」 「あ…ええ…帰ります」 賑やかに騒ぐ人等を見送る。騒ぎが遠ざかって外に出た。 賑やかな所には行きたくない。 …明るい所も行きたくない… 誰も居ない所がいい… 誰も居ない所に行きたい… 明日…明日はまだいい… 十日もすればあの人達が旅行から帰ってくる… 見たくない…そんなの…見たく…な…い… どこか遠くに行きたい…あの人たちの居ないところ…誰も居ないところ… 誰もいない…… 「何をしてる?」 ……えっ… 静かな声がした。
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