夢の男

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私は橋の車道を歩いていた。 「何をしてるんだ」 …又、抑揚のない冷たい声が聞こえる。 うるさい!人の勝手じやない 轢きたきゃ轢けばいいんだ! 男は私の腕を強く掴んで歩道まで引きずってきた。 「人に迷惑を掛けるな。あんたは死んでもいいかもしれんが轢いた方は一生その罪を背負って生きなきゃいけないんだ」 ………… 細身のそんな力が有りそうには見えない男の人が立っていた。 …あれ…この人……秘書課の椎名さん?……あの人の同期と聞いていた。 「ほっといてよあなたに関係ないでしょ」 「人に迷惑掛けてるのにほっとけないだろ」 「もうっ…ここで大人しくしてるか…行って」 それでも私の腕から手を離さない。 「帰るんだ」 その腕を振り切ろうとしても、細身のこの人の力とは思えない握力で私をがっしり捕まえいる。 仕方なしに一歩一歩踏み出す私の肩をその強い腕が包み込む… 目から一滴一滴と涙が零れる… 馬鹿だ…ほんとにこんな人に迷惑かけて… 次から次に涙が止まらない… あの人から今日の結婚を聞いた時から… 初めて思いっきり泣いてる気がする… 私の嗚咽が聞こえる。 その力強い腕が私を優しく抱いてくれるのが分かった。
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