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翌日目が覚めたのは昼前だった。
昨日、唯々下を向いてやり過ごした式…が遠い日のようた。
椎名さんの夢の話しは思いがけないもので、
今日5時から彼と会う。
ホテルのラウンジ…
「上に個室を取ってます。心配しないで下さい。なにもしません、ただ夢の事を落ち着いて話したいだけです。食事もできますしね」
寝室に応接セットとダイニングテーブルを併設した部屋で、ベッドが見えない分緊張しなかった。
彼はパスタ、私はサンドイッチ、ゆっくり来るのを待ち味わって頂く…
思いがけず会社の社長と常務の派閥争いの話しが始まった。創始者の会長の権威が強く直系の常務が幅をきかせていたが5年前に会長が亡くなってから年々社長の勢いが増している。年はとっててもぼんぼんの常務。懐刀の黒川部長が居るから今の所均等を保っているが…危ういと。
常務といえばあの人の舅になる。
その黒川部長が来春提携会社のMBCに移るという。
えっ…そんなこと私が知ってもいいの…
「君だから言ってる。元々部長は仕事が好きで、又出来る人だ。そして派閥争いみたいなものが大嫌いなんだよ。それが常務の大学の後輩てだけで今まで振り回されてきた。だが、 今度MBCの誘いに乗る」
「じゃあ…あの人は…」
「僕は奴に言ったんだ。止めておけと、その結婚。常務の足元が崩れかけてるってね」
「あの人はなんて?」
「信じなかった。嫉妬してるように受け取ったみたいだった」
「ああ…」
「君は奴に裏切られても、まだ彼の為に心配するの」
「………そんな訳じゃ…ただあの人の惨めな姿は見たくない…」
「君達が付き合ってるのは知ってた。聞いた訳じやない。なんとなく分かったんだ」
「一つ分かったことがある。君と付き合いだした奴を見て…これは夢では分からなかったことだ」
「え…」
「奴は君と付き合い始めた時から、大きな契約が次々と取れるようになった。無理かと思われたプロジェクトも通った」
そういえばよく二人で祝杯をあげた…
「えっまた?すご~い」
一番楽しかった頃…
「奴は調子にのってた、俺は凄い、俺に任せろ!って感じでね。…自分を見失ってるようにも見えた。そこに常務の娘との縁談…奴は上しか見て無かった。今まで支えてくれてた君のことを、誰よりも自分を愛してくれる君を置き去りにした」
涙が頬を伝うけど…
それは悲しみよりもそんな私を見ていてくれた人がいたことが嬉しかった。
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