2人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
しかし、今何と言っただろうか。
「朔!今まで姿を見せずにどこで何をしていた?いや、いい言わなくて。どうせどこかで昼寝でもしていたんだろう。いや違うな、お前の場合は昼じゃなくてもいつでもどこでも寝るからな。とにかく、文化祭の準備で忙しくなってくるこの時期に、生徒会長であるお前が不在とはどういうことだ。無駄にいい頭脳を活かせずに何が会長だ。表舞台での挨拶も俺に任せきりで⋯⋯」
真田先輩は彼に向かって一気にお小言を並べる。息継ぎもままならなそうな早口に、私たちは唖然とする。
説教は、約10分は続いたと思う。その間、扉の前の私たちは、その場で身を縮めて彼らを見守っていた。いつも生意気な態度の千翔くんも、呆れた目で見ていたが、肩を竦めて黙っていた。
例の彼は⋯⋯苦笑いを浮かべて真田先輩をなだめつつ、説教を聞いていた。まじめに聞いていたのかは分からない。
私はずっと、真田先輩が最初に言った言葉が気になっていた。机の上で寝ていたあの人を、会長と呼んだ気がした。
「秀。ごめんてば、秀。後輩たちが困ってるから、今はこの辺で⋯⋯」
彼の言葉にやっと説教が止み、真田先輩はこちらを一瞥する。そして、彼に向かってあからさまにため息をつき、私たちに座るよう促す。
「すまないな。里見と有里は、こいつのこと知っているか?」
「俺は知ってます。何度かここで会ったので」
千翔くんは即答するが、私は真田先輩の苛立った雰囲気に戸惑ってしまう。しかし私の名前を覚えていたのか、と頭の隅で思う。
「彼女は、学校では初めて見る顔だな」
説教されていた彼が代わりに答えてくれたので、私も頷いて肯定を示す。先ほどのことが気まずくて、彼とは目を合わせないようにしていた。
「そうか。有里、君には言っておこう」
私は、何が告げられるのかと、思わず身構える。
「こいつが一応正式な生徒会長だ」
「一応は余計だよ、秀」
やはり、聞き間違えなどではなかった。
「でも、会長は真田先輩では⋯⋯」
「役割は一般生徒には発表されていないからな。皆、勝手に俺が生徒会長だと思っているだけだ。俺は副会長だ」
真田先輩の言葉は、にわかには信じられない。1ヶ月ほど前に発表された生徒会役員は5人。京介くん、亜紗美、真田先輩、満先輩と、あともう1人2年の女子。会長だという彼は、役員であることすら発表されていない。
最初のコメントを投稿しよう!